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東京地方裁判所 昭和29年(ワ)11723号 判決

理由

「(証拠によれば)被告会社では予てから、その取締役の富田二郎と原告らが反目対立し事業の運営にも支障を生ずるに至つたので,篠原は被告の代表取締役として昭和二十九年二月半頃取締役を招集し、同年二月二十八日臨時株主総会を開き総会の決議によつてその対策を講ずべきことを決定し、その頃口頭で九名の全株主にその旨を告知したこと、篠原は右二十八日東京都台東区浅草小島町二丁目十三番地の被告の本店に全株主が出頭したので株主総会を開き自ら議長となつてこれを司会したこと、及び原告らの前記解任の決議はこの総会で行われたものであることが認められる。ところで株主総会はその招集権者において、会日の二週間前に会議の目的たる事項を記載した通知書を各株主に発送してこれを招集すべきものであるから、前認定の株主総会には各株主に対する右通知書の発送がなかつたという点でその招集手続上の違法があつたものといわなければならないが、全株主が出席して開かれた総会に関するこの種の違法は決議の効力には何らの消長も及ぼさないものと解するのが相当である。けだし、商法が株主総会の招集について前記のような通知書を各株主に発送すべきものとしたのは主として株主の利益を保護せんとする趣旨に出たものであつて、全株主がこの利益を放棄し総会で異議なく決議を行つた場合に、これを無効若しくは取消し得べきものとする理由はないからである。」

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